おさんぽ花図鑑

ユリ科 Liliaceae

ユリ科は600種を含む。

従来ユリ科に分類されていたものは遺伝子分析により、アルストロメリア科イヌサフラン科キジカクシ科キンバイザサ科チシマゼキショウ科ツルボラン科ヒガンバナ科メランチウム科キンコウカ科などに分割された。

ウバユリ属 Cardiocrinum

  • オオウバユリ

    オウバユリ

    学名: Cardiocrinum cordatum (Thunb.) Makino var. glehnii (F.Schmidt) H.Hara
    分類: ユリ科 ウバユリ属
    原産: 中部以北 北海道
    花期: 夏

    ウバユリの変種。 花茎を長く伸ばして先に大きな花が多いと20個も咲く。 花は10~15cmほどで、花弁は6枚、薄緑色。花弁の内側に茶色の斑点がある。 葉はハート形でつやがあり、長い葉柄がある。 草丈は1~2mほど。

    鱗茎を持つ。 春先にロゼット状の葉を出す。この時は葉柄は短い。 次第に太い茎を伸ばして、その途中に葉がつき葉と葉の間隔も広がると共に葉柄も伸びる(ロゼットが茎と共に地上から伸びた状態)。 秋には種ができる。

    自然には山地などに自生するが、公園などに植生されていることもある。

カタクリ属 Erythronium

  • カタクリ

    カタクリ

    学名: Erythronium japonicum Decne.
    分類: ユリ科 カタクリ属
    原産: 北東アジア 日本
    花期: 早春

    鱗茎植物。数年をかけて成長し、楕円形の葉を数枚広げ、10cmほどの花茎を伸ばして、茎先を下向きにもたげて花が咲く。 花弁は6枚で、上向きに反り返る。日差しがないと花を閉じる。 雄しべが長く葯は濃い紫色をしている。

    一般に花弁は紫色をしているが、極まれに白色もある。これは紫色を発現させるDNAにあるアントシアニン遺伝子が働かないによるとされる。

    鱗茎を食用として片栗粉として利用してきた。しかし少量しか採れないため、最近の片栗粉の原料にはジャガイモなどが利用されている。

    花弁の模様

    スプリング・エフェメラル

  • セイヨウカタクリ

    セイヨウカタクリ

    学名: Erythronium grandiflorum Pursh
    分類: ユリ科 カタクリ属
    原産: 北アメリカ
    花期: 春

    花茎を伸ばし下向きに花が咲く。花弁は6枚で、上向きに反る。 葉は根出葉で、チューリップのようにやや厚みがあって谷折り状。 草丈は20~30cmほど。

    夜や天気の悪い日は花が閉じている。花が閉じていると、下向きに咲くチューリップのようにみえる。朝から昼にかけて日差しがあれば花が開く。

    キバナカタクリや、属名の英語読みでエリセロニウムの名前で流通している。

    庭に植生されていた。

キバナノアマナ属 Gagea

  • キバナノアマナ

    キバナノアマナ

    学名: Gagea lutea (L.) Ker Gawl.
    分類: ユリ科 キバナノアマナ属
    原産: ユーラシア大陸 スペインからシベリア 日本
    花期: 早春

    茎を伸ばし先に花が数個咲く(散形花序)。花弁は6枚で黄色。花序の下には苞葉が2枚つく。 根出葉は1枚、線形で20~30cmほど。鱗茎植物

チューリップ属 Tulipa

  • チューリップ

    チューリップ

    学名: Tulipa
    分類: ユリ科 チューリップ属
    原産: 中近東 トルコ イラン アフガニスタン
    花期: 春から初夏

    球根植物。基部から葉と茎を伸ばし先に花が咲く。

  • チューリップ

    チューリップ

    学名: Tulipa turkestanica (Regel) Regel
    分類: ユリ科 チューリップ属
    原産: 中央アジア キルギス タジキスタン ウズベキスタン 新疆ウイグル自治区
    花期: 春から初夏

    原種系チューリップ。トルケスタニカと呼ばれる。

    茎が枝分かれしてその先に花が咲く。花弁は白色で、内側の基部が黄色。 葉は球根から伸びていて肉厚でやや幅が狭い。

    チューリップの原種は中央アジアが原産とされ、園芸種が多数流通している。 最近は原種系チューリップにも人気がある。

  • チューリップ

    チューリップ

    学名: Tulipa tarda Stapf
    分類: ユリ科 チューリップ属
    原産: 中央アジア タクラマカン砂漠の北 キルギスと中国国境にある天山山脈の平原
    花期: 晩春から初夏

    原種系チューリップ。タルダと呼ばれる。

    細い茎を伸ばして先に花が咲く。花弁の内側が黄色で先が白い。外花被片3枚の外側は暗紫色。 葉は茎を抱くように数枚が互生する。 草丈は15~20cmほど。

    チューリップの原種は中央アジアが原産とされ、園芸種が多数流通している。 最近は原種系チューリップにも人気がある。

ツバメオモト属 Clintonia

  • ツバメオモト

    ツバメオモト
    ツバメオモトの実

    学名: Clintonia udensis Trautv. et C.A.Mey.
    分類: ユリ科 ツバメオモト属
    原産: ヒマラヤ~中国~ロシア 日本
    花期: 初夏

    花茎を伸ばして先に数個の花が咲く(総状花序)。花被は6枚。 葉は幅がある卵状長楕円形で中央に折り目がある。すべて根出葉で数枚重なる。 草丈は20~30cmほどで、花後に花茎は伸びる。

    夏には瑠璃色で上からみると3つに分かれた実ができる。

    多年草。

バイモ属 Fritillaria

  • アミガサユリ

    ミガサユリ

    学名: Fritillaria thunbergii Miq.
    Syn. Fritillaria verticillata Willd. var. thunbergii
    分類: ユリ科 バイモ属
    原産: 中国
    花期: 春から初夏

    淡緑色の花被片が6枚。小さなユリのような花が下向きに咲く。花弁の内側に黒紫色の模様がある。花茎は40~60cmほど。 葉は幅の狭い線状被針形で、3~5枚が輪生する。また茎の上の方の葉は先が反巻して周囲のものに巻きつく。

    鱗茎を持つ多年草。

  • クロユリ

    クロユリ

    学名: Fritillaria camschatcensis (L.) Ker-Gawl.
    分類: ユリ科 バイモ属
    原産: 東北アジア 北西アメリカ
    花期: 夏

    茎先に黒紫色の花が咲く。花弁は6枚で下向きに咲く。 葉は被針形で2~5枚が輪生する。 草丈は30~50cmほど。

    鱗茎を持つ多年草。

  • フリチラリア

    フリチラリア

    学名: Fritillaria imperialis L.
    分類: ユリ科 バイモ属
    原産: イラク~パキスタン
    花期: 夏

    フリチラリア・インペリアリス。 花茎を伸ばして先端の葉の下に下向きに数個の花が咲く。花弁は6枚。 葉は茎に放射状につく(輪生)段々になっている。 草丈は1mほど。

    球根植物。

    フリチラリアは属名の英語読み。

    色違いなど

  • フリチラリア

    フリチラリア

    学名: Fritillaria meleagris L.
    分類: ユリ科 バイモ属
    原産: ヨーロッパ 西アジア
    花期: 春

    フリチラリア・メレアグリス。 細い花茎を伸ばして先に花が咲く。 花は下向きに咲く。 花弁は6枚で、花色は紫色に網目状の模様がある。まれに白色の花もある。 葉は細い線形で互い違いにつく(互生)。 草丈は15~40cmほど。

    花弁の内側など

ホトトギス属 Tricyrtis

  • キイジョウロウホトトギス

    キイジョウロウホトトギス

    学名: Tricyrtis macrantha Maxim. var. macranthopsis (Masam.) Okuyama et T.Koyama
    分類: ユリ科 ホトトギス属
    原産: 日本固有種 紀伊半島
    花期: 秋

    茎と葉の付け根(葉腋)に花が咲く。花は黄色で、花弁は6枚。大きく開かず下向きに咲くので釣鐘状。 花弁の内側に赤茶色の斑点が多数ある。 葉は被針形で葉脈がハッキリしていて、茎を抱く。 草丈は40~100cmほどだが、枝垂れるように咲く。

    自然には山に自生するが、販売されて庭に植えられていた。

    多年草。

    ジョウロウホトトギスは四国の太平洋側に自生するが、葉の表面につやがない。

  • ホトトギス

    ホトトギス

    学名: Tricyrtis hirta (Thunb.) Hook
    分類: ユリ科 ホトトギス属
    原産: 東アジア
    花期: 初夏から秋

    茎先や茎と葉の付け根(葉腋)に花が咲く。花弁は6枚で紫色の斑点がある。 中央に6本雄しべがあって、その内側に雌しべがある。 花柱は先端が3に割れて先が更に2つに割れる。 花色は紫色、白色。 葉は被針形で葉脈がハッキリし茎を抱く。 草丈は40~80cmほど。

    多年草。

    色違いなど

ユリ属 Lilium

わたしの住む神奈川県では、次のような順で咲いている。 6月、テッポウユリ~スカシユリ。7月、コオニユリ~オニユリ~カノコユリ。8月、カノコユリ、タカサゴユリ。

  • オニユリ

    オニユリ

    学名: Lilium lancifolium Thunb.
    分類: ユリ科 ユリ属
    原産: 日本
    花期: 夏

    茎を伸ばし下から順に花が咲く(総状花序)。花はオレンジ色で花弁に黒い斑点がある。 葉は細く短い。茎の円周に互い違い(互生)する。 草丈は1~2mほど。

    茎と葉の付け根(葉腋)に黒い実(ムカゴ)ができる。鱗茎は食用になる。

  • カノコユリ

    カノコユリ

    学名: Lilium speciosum Thunb.
    分類: ユリ科 ユリ属
    原産: 日本
    花期: 夏

    茎を伸ばし、茎と葉の付け根(葉腋)から花茎を伸ばして、大きな花が咲く。 花弁は白地に濃いピンクの模様がはいり、赤い斑点がある。 花弁は上向きに反りかえるように開く。 葉は三角形(被針形)で、葉脈に沿って折り目がある。 草丈は50~80cmほど。

    鱗茎は食用になる。

  • コオニユリ

    コオニユリ

    学名: Lilium leichtlinii Hook. f. pseudotigrinum (Carriere) H.Hara et Kitam.
    分類: ユリ科 ユリ属
    原産: 日本
    花期: 夏

    茎を伸ばし下から順に花が咲く(総状花序)。花はオレンジ色で花弁に黒い斑点がある。 葉は細く短い。茎の円周に互い違い(互生)する。 草丈は40~60cmほど。

    オニユリの小型種で、ムカゴを作らず種で広がる。鱗茎がユリ根として栽培され、食用される。

    変種にキヒラドユリがある。

  • シンタカサゴユリ

    シンタカサゴユリ

    学名: Lilium x formolongo
    分類: ユリ科 ユリ属
    原産:
    花期: 夏

    長い花茎を伸ばし、茎頂に数個の花が咲く。花はやや下向きに咲く。花は先が少しだけ開く。花弁が6枚にみえるが、6裂しているだけで基部は筒状につながっている。 葉は細長い。 草丈は80~150cmほど。

    本種は園芸種で、タカサゴユリL. formosanumテッポウユリL. longiflorumの交雑種。 いくつか種類があるが、本種はタカサゴユリによく似ていて、花弁の外側に紫色の線が無い。

  • スカシユリ

    スカシユリ

    学名: Lilium maculatum Thunb.
    分類: ユリ科 ユリ属
    原産: 日本
    花期: 夏

    長い花茎を伸ばし、上向きに大きく開く。葉は三角形(被針形)花茎の周囲を囲むようにつく。スカシユリの透かしとは、花弁の基部が隣の花弁とピッタリ接触せず隙間があることから。 原種は海岸の砂礫地や崖などに生え、花弁に赤色の斑点がつく。本種は園芸種で、花色は、赤色、オレンジ色、黄色など。

  • タケシマユリ

    タケシマユリ

    学名: Lilium hansonii Leichtlin ex D.D.T.Moore
    分類: ユリ科 ユリ属
    原産: 中国 韓国 日本
    花期: 夏

    茎を伸ばし先に5~10個ほどの花が下向きに咲く。 花弁は6枚で黄色で上向きに反る。 花弁には濃紅色の斑点がある。 葉は長卵形で茎の途中に6~12枚が輪生し、その上に数枚の葉がまばらに付く。 草丈は30~100cmほど。

    多年草。

  • テッポウユリ

    テッポウユリ

    学名: Lilium longiflorum Thunb.
    分類: ユリ科 ユリ属
    原産: 南西諸島および九州南部
    花期: 夏

    長い花茎を伸ばし、ラッパ状の大きな花が咲く。花弁が6枚にみえるが、6裂しているだけで基部は筒状につながっている。葉は三角形(被針形)

  • タカサゴユリ

    タカサゴユリ

    学名: Lilium formosanum Wallace
    分類: ユリ科 ユリ属
    原産: 台湾
    花期: 夏

    長い花茎を伸ばし、茎頂に数個の花が咲く。花はやや下向きに咲く。花弁の外側に紫色の線がある。花は先が少しだけ開く。花弁が6枚にみえるが、6裂しているだけで基部は筒状につながっている。 葉は細長い。 草丈は80~150cmほど。

    テッポウユリに似ているが、より葉が細く、花弁の外側に紫色の線があるのが特長。

    他のユリと交雑が起きやすく、花弁が真っ白な種類もある。

  • ヤマユリ

    ヤマユリ

    学名: Lilium auratum Lindl.
    分類: ユリ科 ユリ属
    原産: 近畿地方より以北
    花期: 夏

    長い花茎を伸ばし、20cmほどの花が10~20個咲く。花弁は6枚で、外側に反る。 花弁には中央に黄色い筋があり、多数の赤茶色の斑点がある。 葉は幅の狭い三角形(被針形)で、互い違いにつく(互生)。 草丈は1~1.5mほど。

    園芸種のオリエンタル・ハイブリッドの元となった種の1つ。

    多年生球根植物。

ユリ園芸種

  • オリエンタル・ハイブリッド

    オリエンタル・ハイブリッド

    学名: Lilium
    分類: ユリ科 ユリ属
    原産:
    花期: 夏

    大ぶりな花が咲く。葉は長く、幅の狭い三角形(被針形)。 山地に生息するユリを中心に交配した園芸種で、オリエンタル・ハイブリッドと呼ばれる。

    カサブランカが品種では有名。

ユリ園芸種の分類

ユリは多くの園芸種があり、欧米でも人気があります。 英国王立園芸協会 (Royal Horticultural Society)ではユリの園芸品種登録を行っています。 園芸種には、1)アジアティック・ハイブリッド、2)マルタゴン・ハイブリッド、3)ユーロ/コーカサス・ハイブリッド、4)アメリカン・ハイブリッド、5)ロンギフローラル・ハイブリッド、6)トランペット・ハイブリッド、7)オリエンタル・ハイブリッドの7種が定義されていて、それぞれ交配の元となった原種等が定められています。 更に、花の向きが(a)上向き、(b)外向き、(c)下向き、花弁の姿が(a)トランペット、(b)ボウル、(c)フラット、(d)リカーブと分類され、“種別(花の向き/花弁の姿)”という記号で示されます。 オリエンタル・ハイブリッドの上にある種類ですと、“7(c/d)”と表記します。

International Lily Register & Checklist (RHS)


植物の分類について

植物の分類についてはDNAなどに基づいた最新の分類:APG IV (Angiosperm Phylogeny Group IV)を使用しています。 また、学名や分類について議論が続いているものについてはBGPlants(研究用植物データベース作成グループ作成: Data-base on the plants kept in the Botanical Garden)の成果であるYListを参考にしています。